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バービー、ケンと世紀の破局――の真相

:2004.02.22:おもちゃ

 2004年2月12日、コンシューマー・プロダクトをフォローする米国ジャーナリスト達の間に衝撃が走った。ファッションドール界、いやおもちゃ界のクイーン&キング、マテル社所属のバービーとケンが破局した。一体何があったのか、これから2人はどうなるのか。折りしもこのニュースが入ったのは国際おもちゃフェアが開催される直前。真相を探るべく、私はさっそくニューヨークにあるマテル社ショールームに出向いた。

 カップルの破局が発表された同社発行のリリースには、こうある。「童話のようなバービーとケンのロマンス、終局を迎える」。それによると、43年にわたりカップルとして片時も離れなかったバービーとケンが、「しばらく別々になることを決めた」のだそうだ。バービーの方はこれまでにも、セレブのバンドメンバーやシークレット・エージェントスパイと“友達”になることはあった。しかしケンはバービー一筋。彼女の方もそれを知ってか、どんなに有名になろうとも他の人形と深入りした関係を持つことはなかったし、ケンは常に別格だった。

 マテル社のマーケティング部門副社長ラッセル・アロンズ氏は、世紀の破局についてこう語る。「2人はちょうど4本目の映画を撮り終わったところで、一人ひとりが自分の時間を過ごしたいと感じたようです」。

 水着姿のバービーがマリブ・ビーチで“デビュー”したのは、1959年のことだ。誰もが知っている通り、それからの彼女はおもちゃとしてのみならず、ポップカルチャーのアイコンとしても活躍し続けてきた。1961年には、彼女の相手役として抜擢されたケンがTVコマーシャルに初登場。プライベートな関係はそのまま売りになり、スカーレット・オハラとレット・バトラー、ロミオとジュリエットなどクラシック・カップルを演じたことも少なくない。

 マテル社のショールームで私は、バービーとケンに直接対面した。彼らは現在、新ライン「カリガール(CaliGirl)」の宣伝に忙しいという。カリガールは、カリフォルニア・ガールの略で、活躍の舞台はビーチである。ここではバービーとケンは「単なる友達」。新しい女友達(サマー、テレサ、リア、クリスティ)と男友達(ブレイン、ケン)に囲まれた集合写真では、バービーとケンはもはや隣同士にはいない。しかし、ビーチバレーに興じるバービーはすでにふっきれているようで表情はさっぱりしているし、何よりも日焼けした肌がシングルライフの充実ぶりを物語っている。

 バービーとケンには、「カリガール」の他にも商品ラインがある。2人が破局したとなれば、それらの別ラインにも影響が出るのではないだろうか。そう考えた私に担当の女性はこう答えた。「いえ、他の商品ラインでは、2人はまだカップルです」。

 混乱する私。担当女性の話をまとめると、カリガール以外の商品ライン――「王女と乞食(The Princess and The Pauper、今年秋に登場する彼ら主演の4本目の映画)」「フェアリートピア(バービーが魔法の国に住むという設定)」などでは彼らの扱いは恋人同士。カリガールという新商品ラインの世界のみで2人は破局した、というのが真相のようだ。一体どうしてこんなに紛らわしいことをするのだろうか。

 これまでも何度か記事で触れてきたが、ファッションドールの世界は様変わりしつつある。バービーに可愛い服を着せるだけで満足していた少女は減り、もっと強くて自立したキャラクターが求められるようになった。マテル社の新しいバービーマネージメントチームは、少女の声に耳を傾け市場トレンドに柔軟に対応することでバービーのブランドイメージを再構築しようとしている。そうして誕生したのがカリガールだ。ここでのバービーは、ケンの助けを必要としない。自立した女性を象徴しているのだ。

 従って、今後2人がどうなるかは、カリガールが少女にどのように受け入れられるか――もっと率直に言えばカリガールが売れるかどうかによって決まる。バービーとケンが破局したまま永遠のシングルとなるか、あるいは再熱愛となるか、その鍵を握っているのは、実は巷の少女達なのである。

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ちまきっくFACTS
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 今年も行ってきました、おもちゃフェア。ケンとバービーの件についてはビックリしたし、正式発表された資料だけでは事情がよくわからなかったので、とにかくマテル社に話を聞きに行きました。ま、タネを明かしてみれば今回の破局は「マーケティング上の理由」ということですよね。それでもバービーで遊んだアメリカ人にとってはかなり大きなショックだったようで、「せっかく長年2人を集めてきたのに」「女が40過ぎてシングルになるなんて」などなど、色々な意見を読みました。ファッションドールが多様化してきた昨今では、ホント可愛いだけじゃダメなんですね。それって、ドールだけの話じゃないけどさ。

 ところで、今年のフェアはけっこう地味だったのが印象的でした。ライセンス商品の洪水を起こす大きな映画プロジェクト(「ロード・オブ・ザ・リングス」や「スターウォーズ」みたいなヤツ)がないことと、テクノロジーをおもちゃに応用するというのがある意味限界にたどり着いてしまったことが理由だと思います。ハイテクおもちゃが当たり前になったことで停滞。でも、また新しいモノがきっと出てきます!

 あ、ちなみに、今回フェアに行って最も嬉しかったことは、「クイア・アイズ・フォー・ザ・ストレート・ガイ」のジェイとカーソンに会ったこと!でした。うふふふー。今回の記事にはぜーんぜん関係ないんですけど★

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破局を公表したケンとバービー

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Cali_Girl
カリガールの友達と微笑むバービー

Blaine_and_Barbie
彼も新しい“友達”ブレイン

CaliGirlVolleyBall
ビーチバレーを楽しむカリガールの仲間

Analiese_Serafina
バービーとケン主演の4本目の映画「王女と乞食」より

Erika_and_Prince
同じく「王女と乞食」より。この“世界”ではケンが王子様として登場。

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