This is wacky!――その1
歌をうたうトロフィー・フィッシュ
:2000.09.06--おもちゃ
「トロフィー・フィッシュ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。魚の剥製を板状の台に打ち付けた飾りもののことで、大物を釣り上げたとき記念につくって部屋の壁に掲げる。日本では大物を釣ったときには「魚拓」をつくるが、それの欧米版である。このトロフィー・フィシュをかたどった妙なおもちゃが、流行っている。
「ビッグ・マウス・ビリー・バス(Big Mouth Billy Bass)」は、本物そっくりのバスがトロフィー・フィッシュの台の上で尾ひれを打ち鳴らし、首を持ち上げて歌を歌うという、それだけのおもちゃだ。センサーがついているので、人が前を通るとバスが首を人の方に向けて、大きな口を開け、歌をうたい出す。歌の最中は尻尾をパタパタと台に打ちつけ、リズムをとる。歌が終わると動きが止まり、単なる「トロフィー・フィッシュのような飾りもの」に戻る。
ビリーがうたう曲は、ボビー・マクファーレンの1988年ヒット曲「ドント・ウォリー・ビー・ハッピー」と、アル・グリーンの1974年ヒット曲「テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー」の2曲だ。樹脂製のリアルなバスが、「まな板の上の鯉状態」でのたうちながら歌を歌うところが面白い。単純なおもちゃだが、見ると笑い出さずにはいられない。
「ビリー」を創ったのは、テキサス州アービングにある小さなトイ・メーカー、ゲミー・インダストリーズ社である。面白いのは、最初にこの商品を考案したのは実は社員の妻であったことだ。元々デザイナーをしていたこの妻が、「歌をうたう魚のおもちゃ」という製品を最初に思いつき、夫に話をした。乗り気になった夫は、妻のこのアイデアを元にして会社に企画を出したが、魚を上手につくることができず、ボツになってしまった。しかし彼はそこであきらめず、上司に黙って「ビリー」の企画を進めた。よりリアルなバスを作るため剥製師に助言を求めたり、本物の魚らしい色を出すために色の選定を念入りに行った末、「ビリー」が完成した。
「ビリー」は、今年の夏からショッピングモールのギフトショップやトイ・ストアの店頭に現れはじめた。店の前にはデモ商品が置いてあり、前を人が通るとビリーがうたい始める。くだらないのについ立ち止まって見入ってしまい、人垣ができる。最近では海賊版の商品も現れ始めた。
ゲミー・インダストリーズでは、「ビリー」がヒットしたため、これから冬にかけての大きなショッピング・シーズンに向けて第2弾、第3弾の商品を用意している。ハロウィン用にはがい骨になったビリー、クリスマス用はサンタの帽子をかぶって尾ひれに鈴をつけたビリーだ。ジョーズ(サメ)のバージョンも発売予定だという。「ビリー」の価格は、約30ドル。
ゲミー・インダストリーズ:
(http://www.gemmy.com/)
「Big Mouth Billy Bass」の文字をクリックすると「ビリー」のページに行けます。歌のデモが聴ける。
「すごく妙でびっくりした」「すごくクダラナイけど、笑っちゃう」という、日本では到底商品たり得ないモノが、アメリカにはけっこうあります。そんな一瞬芸のようなモノを紹介する記事を「This is wacky!」というシリーズ名で統一することにしました。今回はその第1弾で、「ビリー」の登場であります。
実際に見るとわかるんですけど、コレ本当にくだらないんです。でもおっかしいんですよね。陸に上がった魚がびくんびくん動く状態って、けっこう面白いというか――びっくりするほどよく動くじゃないですか。そういう“感じ”がこの商品にはあるんです。リアルな魚っぽい感じ――魚の顔とか、動き方――が。だから、ものすごくバカバカしいんだけど、笑っちゃう。
なんでも、ブレヤ英首相がビリーを持っているし、クリントン大統領はゴア副大統領にビリーをプレゼントしたというようなことまでまことしやかに伝えられていて、とにかくホットな商品であります。
最近コピー商品も出回っていますが、私が色々見た限りではコピー商品はどれも「ビリー」ほどかわいくないです。もし購入される方がいたら、間違って買わないでほしいな、と思っちゃう。だって「ビリー」の方が絶対かわいいから(ホントです)。
上の記事を1週間に1度、電子メール版として無料でお届けしています。ただし、電子メール版には写真が添付されていませんので、WHJウェブサイトも見に来てくださいね。
こちらでご登録をして下さい。
|
|
ビッグ・マウス・ビリー・バス |
|
これがハロウィン用「ビリー」。何の歌をうたうのかなぁ? |
|
ジョーズ・バージョン |
|
トラウト・バージョン。名前はまだないみたい。 |
|
クリスマス用「ビリー」。鈴がかわいらしいです。 |
|