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ブロッコリーニ

:1999.04.19:食品

 「日本で生まれてアメリカでヒットしたもの」と言って、誰もがすぐに思いつくのは、家電製品などのハイテク・プロダクトかテレビゲーム、たまごっち、アニメなどのエンターティメントに属するモノやソフトと相場は決まっている。

 しかし、日本で生まれた商品で、今「最も新しくオシャレ」とアメリカのメディアが取り上げ次に流行しそうなモノは、なんと「野菜」である。日本で開発された新しい野菜「ブロッコリーニ」が、今、アメリカの新しモノ好きな人々の間でもてはやされているのだ。

 ブロッコリーニは、ブロッコリーの先端についている花蕾(からい=つぼみのこと)の部分にアスパラガスの長い茎をつけたような姿をしている。ちょっとスマートなブロッコリーといった感じの野菜だ。味はブロッコリーに似ているがくせはあまりない。茎は柔らかく、まるごと食べられる。シンプルに茹でただけでもとてもおいしい野菜だ。ビタミンが豊富で栄養価が高い上に、調理用途もボイルやフライ、ロースト、蒸し、グリルと幅広い。

 ブロッコリーニを開発したのは、日本の種苗メーカー、(株)サカタのタネである。開発を始めたのは約10年前のことだ。ブロッコリーは寒冷地で良く育つため、栽培できる場所と季節に限界がある。これを拡大しようと考えたのが最初のアイデアだ。寒冷地向きであるブロッコリーの栽培地や栽培季節を拡大するということは、暖かい土地でも育つように改良しなければならないということだ。そして、同社が出した結論は、まったく新しい野菜をつくることだった。

 ブロッコリーの鮮やかな緑色と蕾を残しながら新しい野菜をつくる――そのために選ばれたのが、中国芥藍(ちゅうごくがいらん)だ。芥藍は元々キャベツの仲間で、真夏にも栽培できるほど暑さに強い。中国南部や東南アジアでは広く栽培されており、アメリカでもチャイニーズ・グロッサリーなどで「チャイニーズ・ケール」「チャイニーズ・ブロッコリー」「ガイラン」「ガイロン」といった名前で販売されているごく普通の野菜だ。芥藍は耐暑性が優れている他、ブロッコリーより茎が柔らかく甘いフレーバーを持っているといった利点があったため、ブロッコリーの新種を開発するための材料としてはうってつけだった。

 ブロッコリーと芥藍とを「親」にして、プラント・ブリーダーが手による受粉を約7年かけて続け、新種「アスパレーション」(姿がアスパラガスに似ていることから)ができた。日本でこの種を使ってトライアルを行うと同時に、サカタのタネでは、アメリカの野菜生産会社にアプローチをかけた。

 サカタ・シード・アメリカのブロッコリー種子の全米第一位の供給先であり、パック詰めの生鮮野菜などで知られるマン・パッキング社では、昨年からアスパレーションを栽培し始め、「ブロッコリーニ」という名前を考案して登録商標を取り、アメリカ市場に出荷を開始した。こうして、ブロッコリーより甘くちょっとオシャレな姿をした新しい野菜「ブロッコリーニ」が誕生した。

 ブロッコリーニは、アメリカでは最初一部のグルメ・フード・ストアなどでしか見かけられなかったが、今年春になって「セーフウェイ」など一般のスーパーマーケットにも出回るようになってきた。価格は一束が2ドル程度と野菜が安価なアメリカでは高目の設定だが、新しい野菜の誕生はアメリカでも久しぶりのこと、試しに買い求めていく人は多い。

 ブロッコリーニは日本では今のところ市場にはほとんど出ていないそうだが、今年の冬あたりから来年にかけて、ホテルやレストランを中心にして普及が進んでいきそうだ。このクリスマスあたりにちょっと豪華なディナーを計画される方は、メニューにあったらぜひトライしてもらいたい。ブロッコリーニは”Made in Japan”のオシャレな野菜である。

マン・パッキング社のウェブサイト
(http://www.broccoli.com/)
ブロッコリーのことやブロッコリーニのことが非常に詳しく解説されています。ブロッコリーニのレシピページは必見モノ。
ブロッコリーニのレシピページ
(http://www.broccoli.com/kitchen/kitchentoc.htm)

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ちまきっくFACTS
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 「日本モノ」の「アメリカでのハヤリモノ」がまさか野菜とは、ビックリしたでしょ〜!?意外なところに実は意外な流行があるんだよね、と言いたくて書いてみました。

 日本の八百屋さんでみかけることは今のところほとんどないと思うんだけど、アメリカに住んでいる方はぜひグロッサリーストアやレストランで探してみてください。けっこうオシャレめなレストランでメニューに採用しているところが増えています。グロッサリーでは、グルメを気取ってるような(?)店に行くと見つけやすいと思います。私は高級住宅地っぽいところにあるセーフウェイで発見して、この記事の撮影のため2束買い求めました。1束が$2.39で「お、ちと高いなあ」と思いましたが、レジに持っていったら黒人のおねーちゃんに「なんでこんな高い野菜を買うのだ」と聞かれました。でもですね。撮影が終わった後、半分茹でて、マヨネーズ+ごま油少々+しょうゆディップで食べたらこれが!うまいのなんの!!あの、「野菜スティック」ってあるでしょ、スノッビーなバーなんかに行くとあるやつ。あれみたいな感覚で、指でつまんでディップして食べたらおいしい。残りの半分は、やはり茹でて半分に切って春巻きの具として巻いて揚げて食べました。こちらもむちゃおいしかった。洋風レシピはマン・パッキングさんのウェブページに詳しく出ていますから、覗いてみてください。

 今回はサカタ・シード・アメリカの金子さんにお話を伺いました。金子さんにはブロッコリーについての基礎知識に始まってブロッコリーニの栽培苦労話(?)まで色々と教えてくださいました。この場を借りてお礼を申し上げます。

 伺ったお話には――例えば、春から秋にかけてはカリフォルニアで、冬の間はアリゾナの方で栽培しているとか、収穫が1度で済まず何度もしないといけないし、人間の「手」でつまないといけないので、文字どおり手間ひまかかって値段がちと高めになるとか、畑でうまそうなのを取ってその場で食べたらむちゃくちゃうまいとか(うらやましー)ってのがありました。アリゾナのデザート地帯にぶわっと広がるブロッコリーニ畑なんて、想像するとスゴそうで、行ってみたいです。

 それから、ブロッコリーニを開発する段階で、なんでいわゆる遺伝子操作を行わずにわざわざ「手」で受粉させてつくったのかなあ、と疑問に思っていたのですよ。だって「手」でやったら時間かかるでしょ?ブロッコリーニも10年もかかっているわけじゃない。遺伝子操作したら早いかなぁと思って。そうしたら「新しい野菜を出すと必ずどうやってつくったかということを気にする人がでてくる。特に今はトランス・ジェニックについて様々な意見があり、大きな問題になっている。だから普通の、伝統的な方法でしか開発は行わないのです」とおっしゃっていました。なるほど。私は特にトランス・ジェニックについて否定的な考えを持っているわけではないんですけど、まあそういうことを気にする人は多いよね。

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中国ガイラン。ブロッコリーニの片親
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こうしてみるとやっぱおしゃれさんだよね。この野菜
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