ヘッダ
WHJ
イママデのヨミモノ
WHJ
There's Something About Panda

:1999.12.14:その他

 商品や現象の流行は、“流れ行く”という言葉どおり「一時期だけ人気が出て消え去る」のが運命だ。が、ロングセラーで愛されているものが何かの理由で突然再び脚光を浴びるとこともある。今回は、モノでも現象でもないが、日本のみならず世界中で人々に愛され続けていることから、そんな「ロングセラーもの」と定義できるジャイアントパンダの話である。最近、アメリカ各地の動物園でジャイアントパンダ関連の出来事が続けて起こっており、パンダ人気が再燃すると同時に、議論の的にもなっている。

 アメリカには、現在5頭のジャイアントパンダがおり、いずれも動物園で飼育されている。中でも、サンディエゴ動物園で今年8月21日に産まれたメスのパンダ「ファメイ」は一番の人気者であろう。「バイユン」(母)と「シシ」(父)との間で行われた人工授精が成功して誕生したファメイは、12月で生後4カ月になった。ファメイはまだ一般には公開されていないが、サンディエゴ動物園のウェブサイトに行けばいつでも観察できる。保育器の上に取り付けられたデジタルカメラが24時間彼女の姿をとらえ続け、そのが画像がインターネットで公開されているからだ。

 アトランタ動物園には、11月に中国から来たばかりのヤンヤン(オス)とルンルン(メス)が暮らしている。2匹が住むパンダ舎には、実に14台のカメラが備え付けられてその姿を撮影し続けており、同園のウェブサイトに行けば、サンディエゴ同様、パンダの様子をライブで観察できる。

 ベビー・パンダの誕生と、新しいパンダ・カップルの到着。この2つのニュースがアメリカでのパンダ人気が再燃した理由である。一方、これらのニュースと同時期に悲報も伝えられた。11月28日、ワシントンDCの国立動物園で飼育されていた「シンシン」(オス)が死亡したのだ。シンシンは死亡時28歳、人間で言えば80〜90歳に相当する老齢だった。このシンシンの死、そして残った5匹のパンダが人気者になるにつれて、その裏にあるもう一つのストーリーが浮き彫りにされている。

 シンシンは、アメリカが所有していた最後のパンダであった。彼は1972年、ニクソン大統領の訪中に際してリンリン(メス、1992年死亡)と共に中国から贈られた「ギフト」だった。だが、パンダの数が極めて少ない(中国国内に推定一千頭と言われている)ことが理由で、中国は他国へのパンダの贈呈をもう行っていない。「レンタル」のみである。サンディエゴの3匹、アトランタの2匹は、いずれも中国のものなのである。子供が産まれた場合も、育てるのは他の国だが所有権は中国にある。

 しかも、パンダのレンタル料金は破格である。アトランタの2匹を中国から連れてくるまでには15年間に渡る政治的交渉が行われると共に700万ドルのレンタル料がつぎこまれた。アトランタ、サンディエゴの両園とも、一般からの寄付はもちろんコカ・コーラ、UPS、ターナー・エンタープライズなどの企業からも多額の寄付を受け、ようやくパンダを手に入れたのである。

 パンダ目的で動物園を訪れる人が多いのは世界共通で、動物園側はパンダを欲しがる。ジャイアントパンダはVIP待遇の「スター」である。しかしながら、そのレンタル料金のあまりの高さ故に、動物保護団体などからは中国からのレンタルをめぐって様々な意見が出ている。アトランタ動物園では、毎年中国側が提示したレンタル料金を支払うために基金を設立したばかりでなく、入場料もこれまでの10ドルを12ドルに値上げした。シンシンをなくしたワシントン国立動物園では、現在中国からパンダを借り入れようと寄付金を募っている最中で、これまでに150万ドルを集めた。しかし、中国側のオファーは10年契約で800万ドル。同園は税収入からのサポートや寄付金でまかなわれており入場料がないため、中国の提示する金額を集めるのは非常に難しいのが実情である。

 中国側はこの膨大なレンタル料金をパンダの「研究と保護」のために使うと説明しているが、その用途について疑問を投げかける声が出されている。5匹のパンダはアメリカ中のアイドルになっているが、その裏にはレンタル料金をめぐって中国との政治的な駆引きがある。アメリカでのパンダ・カップルの報道は、基本的には吉報として伝えられているが、コントロバーシャルな話題にもなっているのである。

サンディエゴ動物園のファメイが観察できるパンダカム
(http://www.sandiegozoo.org/special/pandacam/)
アトランタのヤンヤンとルンルンが観察できるパンダカム
(http://www.accessatlanta.com/partners/zooatlanta/pandas/cams/)

WHJ
ちまきっくFACTS
WHJ
 シンシンの様態が悪化したことがきっかけで、アメリカではジャイアントパンダの貸出しシステムが話題になっています。それではじめて私はその「からくり」を知りました。パンダはよく中国との「友情」とか「親交」のシンボルと考えられることが多いですけど、ホントはそんなきれいごとじゃないんだなあと思った次第です。「10年で800万ドル」というのが、この絶滅寸前の珍獣の保護に妥当なのかはよくわからないので何とも言えませんが、まあ、中国の完全な言い値で成り立っている「売り手市場」であることだけは確かです。

 シンシンを今年の5月に一度だけ見たことがあるんですが、そのときはすでに具合が悪くて、お尻しか見ることができませんでした。くやしかったのでぬいぐるみを買って帰ってきました。10月に虎の子(3匹も産まれたんですよ)を見に国立動物園にもう一度行ったんですけど、パンダ舎はもう閉まっていてシンシンは「面会謝絶」になっていました。最近のニュースによると、死んでしまったシンシンは剥製になってスミソニアン博物館に展示されることになったそうです。

 ところで、サンディエゴのファメイは本当にラブリーで、毎日仕事の合間にインターネットで見ています(これが私の「最近のハヤリ」となっています)。たいてい寝てるんですけどね、よく動くんですよ。寝返りをうつとPaw(手のひら)が見えてかわいらしいったらありゃしません。白黒ですけど、あちこち動き回らない赤ちゃんのうちにぜひ一度見にいってみて下さい。

WHJ
ご感想
WHJ
1.今回の記事はどうでしたか?
ご意見・ご感想を書いていただけると、とても嬉しいです。

「おもしろかった」
「まあまあおもしろかった」
「ふつうです」
「あまりおもしろくなかった」
「うーん・・・よくない」


2.ご意見・ご感想
※頂いた感想はWASHHAPPY掲示板に掲載させて頂くことがあります。ご了承下さい

3.お名前(またはニックネーム)


4.電子メールアドレス



ありがとうございました。
WHJ
メルマガ配信中
WHJ
上の記事を1週間に1度、電子メール版として無料でお届けしています。ただし、電子メール版には写真が添付されていませんので、WHJウェブサイトも見に来てくださいね。
こちらでご登録をして下さい。

WHJ
panda
Courtesy of the Zoological Society of San Diego, 1999
WHJ
フッタ
 
トップ WHJPROCLUB 掲示板 イママデのヨミモノ コンシュウのヨミモノ 最新情報